事務職から介護職への転身

病院の総務部に勤務していた時、患者さんと直に接する機会がありました。そのような経験を何度か重ねるうちに、裏方で黙々と仕事をするよりも楽しいな、現場で働きたいなとゆう思いが芽生えてきました。現場の大変さはよく聞いていましたが、いつの間にかやってみたいと強く思うようになりました。

24時間のうちのほぼ三分の一を仕事に費やすので、やりたいことしてもっと充実した日々を送りたい、と当時派遣社員だった私は契約期間満了時に退職しました。この時点で次の仕事は決まっておらず、無職期間は貯金を切り崩す生活でした。

無資格の私に仕事があるのか、不安や疑問は多々あり色々調べました。知り合いの看護師に相談したところ、介護助手の仕事を紹介されて施設を見学する機会に恵まれました。実際に貴重な現場の話をお聞きしたり、積極的に就職活動をした結果、デイサービスの介護職員を志望して採用されました。「給料は安いですが、研修もあるので一から勉強して下さい。決してすぐに辞めないで下さい」雇用主から言われたことは今でも記憶に残っています。

前職との大きな違いは人の命を預かることです。私のケアレスミスで利用者の方に怪我を負わせたり、命を危険にさらすかもしれません。何か起きた時に新米だからでは通用しません。お昼休みも時間通り十分にとれず、不足分は空いた時にとるなどして調整していました。体を使う仕事が増えたことも大きな相違です。特に入浴介助では体の小さい私は苦労しました。テコの原理を利用して上手に体を使わないと、体格の良い方の介助は出来ません。介助者が体を壊してしまいます。肉体労働に関しては覚悟していましたが、慣れるまでは過酷でした。ある程度の技術を身に付けてからは負担がかなり軽減されました。

待遇では、前職の派遣の方が福利厚生や時給などの面で充実していました。私は無資格、無経験だったので当然低い時給からのスタートでした。研修を受けながら時給をいただいていると思い仕事をしていました。勤務しながら資格を取得すると昇級出来るシステムでした。この施設では社員がほんの数人で、私のようなフルタイムのバイトとパートさんで成り立っていました。一人でも欠勤すると回らなくなる程ギリギリの人数です。社員の方とは給料の面で大きな違いがありながらも仕事内容はほぼ同じです。当然、私たちの間では不満の声も上がっていましたが、皆口々に「好きだからね」と言っていたことが印象に残っています。

転職前に予想していたことと違っていた点は二つあります。まず、肉体労働が主だと思っていたことです。実際は利用者の方の前で30分ほど話をしたり、ゲームなどのリクリエーションを考案したり、工作の準備をしたり、と様々な能力が求められました。このことは一番の驚きでした。夕方になると、一人一人を思い浮かべて一日の様子を文章にするので観察眼や文章力も求められます。

次はイメージについてです。当初は食事や入浴介助をしながら、利用者の方と談笑しているようなイメージを抱いていました。しかし現実は全く違っていました。職員は周りに気付かれない程度の緊張感を常に持っていました。研修もたくさんあり、感染症や緊急事態時の対応についてなどテーマは様々でした。利用者の方は予想外の行動をとるので常に目を光らせていなければならず、体調の急変にもすぐ気付かなければなりません。決して気楽なものではありませんでした。救急車を呼ぶ緊急事態時は、とっさに他の利用者の方を不穏にさせないような雰囲気作りをしなければなりません。

労働条件は決してよくないので好きじゃないと続けられない仕事です。しかし、これからの人生で役立つことをたくさん学ぶことが出来ます。私の場合は、認知症の祖母の介護や足の悪い祖父の介助の際に家族から頼りにされました。職員の中には私を含め転職組がいましたが、年齢を重ね経験豊富な方は向いていると思います。私は結婚を機に退職しましたが、今も頑張って働いて居る仲間を想うと労働条件の改善を願い続けます。医療と同じで介護も命と向き合う現場です。少しでも働きやすい環境になってほしいですね。